感性実装トピックス

日本初 果皮酢飲料「KAHISU®︎

尾道造酢株式会社 

日本初 果皮酢飲料「KAHISU」|一般社団法人感性実装センター|感性 ものづくり

開発ストーリー

だいだいの皮からできた、エシカル志向*1の果皮酢飲料「KAHISU®︎カヒス」。

果実の皮を発酵させて生まれた原酢(果皮酢かひす)を、KAHISU®︎として生み出すまでには、様々な人の想いが結集してできた逸話があった。

そんなKAHISU®︎のうまれたストーリーを紐解いていく。


社会や地球のために、私たちができることはないだろうか。「KAHISU®︎ Sweet & Biteer」の開発は、そのような想いから始まった。

 

KAHISU 瀬戸内|一般社団法人感性実装センター|感性 ものづくり

穏やかな波とやわらかな太陽の光に恵まれた瀬戸内海。柑橘がみずみずしく育つこの瀬戸内は、日本有数の柑橘栽培地域として知られる。果実の販売だけでなくジュースやジャムなどの加工品も多く生産されているが、加工過程では果実の果肉や果汁のみが利用され、残った皮はそのまま廃棄されるのが一般的だ。


食に関する技術で県内企業の支援を行う広島県食品工業技術センターの坂井研究員は、日本で初めて橙の皮を発酵させてお酢をつくる技術の開発に成功した。この技術移転による実用化に挑戦したのが、1582年創業以来440年以上、広島県尾道市でお酢造りを続けている尾道造酢おのみちぞうすだ。

 

尾道造酢は、ぽん酢など橙を使用した商品を年約1万リットル製造する。橙の重量あたり約15%は果汁として使用されるが、残りの85%は廃棄される皮だ。『これからの時代、廃棄されるものを利用することが、社会や地球のために私たちができる一つだ』。この想いが原動力となった。

 


廃棄される搾汁後の皮を果皮酢として生まれ変わらせ、社会や地球の未来に価値あるものを残していくという、エシカルなメッセージ性をもった、日本初の果皮酢飲料をつくる。プロジェクトチームにとって大きな挑戦が始まった。

 

商品開発を目指したのは、このために集められた専門家たち。ひろしま感性イノベーション推進協議会事業として特別チームが編成された。プロジェクトコードは「1582*2」。

 

商品化にあたり、この果皮酢が有する高いポテンシャルと、エシカルという普遍的なメッセージ性に相応するため、味もこれまでにない美味しさだと自信をもっていえる果皮酢飲料にしたい、という強い想いをプロジェクトチームの全員がもっていた。


そこで注目したのが「人の感性に着目した商品開発」だ。一般的なビネガードリンクは、お酢の「酸味」(VINEGARY)に「甘味」(SWEET)を加えた味覚である。それに対し、果皮酢には橙の皮による3つ目の味覚「苦味」が加わっているのが特徴だ。 

 

市場に流通するビネガードリンクでは味わえない果皮酢の特徴である「苦味」を生かしつつ、3つの味覚のバランスがとれた美味しさのポイントを、プロジェクトチームのメンバーは粘り強く探し続けた。


その挑戦を可能にしたのが、感性工学を活用した調査実験だ。味覚成分の割合を微妙にコントロールした膨大な試飲サンプルから、量産化に向け絞った最終候補をサンプルとし、果皮酢飲料に対する嗜好性や味覚に対する感性評価*3を行った。

 

感性評価のデータ解析結果から,ひとつの方向性を探り出した。それは,果皮酢の「苦味」(BITTER)の領域は、チョコレートやブラックコーヒーを連想するような「ほろ苦さ」(BITTER感)として嗜好される味覚ポイントがあることだった。


「ほろ苦さ」(BITTER感)を見出した瞬間、果皮酢が秘めていた資質にスポットライトが当たった。果皮酢が一歩先の価値へ、生まれ変わった瞬間だった。

開発から約1年。美味しさの追求を経て、ビネガードリンクではこれまでなかった「酸味」(VINEGARY)・「甘味」(SWEET)・「ほろ苦さ」(BITTER感)を見事にブレンドさせた、深い味わいが楽しめる大人テイストのKAHISU®︎が誕生した。


KAHISU®︎は、大人の味覚「Sweet & Bitter」をベースとした2つのフレーバーを提供する。ブレンドGは、フルーティーな味わい。ブレンドMは、みずみずしくすっきりとした味わいだ。

 

ボトルデザインは、それぞれのフレーバーの特徴を、普遍的な存在感を放つ2人のフランス人画家の作品の世界観で表現している。2人の画家とは、画家人生の多くを南国タヒチで過ごし、そこに暮らす人々や風景を描いたポール・ゴーギャンと、睡蓮などの風景画を多数描いた印象派の代表格として知られるクロード・モネだ。 ブレンド名称は、ゴーギャン、モネ、それぞれの頭文字「G」と「M」である。

 

味もパッケージも既存のビネガードリンクとは一線を画すものとなっているKAHISU®︎。デザインコンセプトは『Artistic Design for Ethical Choice 地球のために、100 年後の子どもたちのために』。これまでにない新しい価値観を提供する。


(上)ポール・ゴーギャン (下)クロード・モネ  が描いた作品世界観のイメージ

KAHISU®︎はギフト専用で販売される。商品が生み出された背景やストーリーを感じとり、社会や地球の未来を大切にする想いを言葉に代えて誰かに贈り伝えていく。それがKAHISU®︎の役割だという。

 

橙の皮から果皮酢が生み出され、人の感性に着目して潜在的な味覚の価値を見出し、普遍的な世界観を表現したデザインで、社会や地球の未来へのギフトをコンセプトにしたKAHISU®︎は、ひろしま感性イノベーション推進協議会の産官学連携による、オール広島のプロジェクトチームの力が集結したプロダクトとなった。

 

様々な人の想いが紡がれたKAHISU®︎のストーリー。これからは手に取る人たちの想いのリレーによって、100年先の未来へと新たな物語が織りなされていく。

 

 

ライター:山崎志織



*1 エシカル志向社会や地球のために考え行動する(地球環境に配慮した商品をつくる、人や社会に配慮された商品を購入する)こと

*2 1582:尾道造酢の創業年。伝統を守りながらも新たな挑戦をチーム全員で行おうというメンバーの絆を象徴し決定された

*3 感性評価:人の感性を定量的に可視化し、製品やサービスの開発や設計に生かすデータを得るための手法のこと

KAHISU®︎

橙の“皮”を発酵させてお酢をつくる日本初の技術を実用化、感性工学を活用し誕生した大人テイスト(Sweet & Bitter)な果皮酢飲料「KAHISU®︎」は、これまで廃棄されていた橙の皮を有効活用するというエシカルな製法でつくられた新しい飲料。フルーティな甘さの「Blend G」と、みずみずしくすっきりとした味わいの「Blend M」の2フレーバー1セット(各500ml・希釈タイプ)、3,456円(税込)。ギフト専用で2022年8月12日より発売開始。オススメの飲み方は炭酸水割り。その他にもお水や、スピリッツ(ウイスキー・ジン・ラムなど)+炭酸水で割っても美味しくいただける。

 

 

世界最大級のデザインコンペティション「A’ DESIGN AWARD & COMPETITION(ITALIA)」にて

「BRONZE A’ DESIGN AWARD」を受賞

 

一般社団法人感性実装センターが研究実装プロデューサーを務める「ひろしま感性イノベーション推進協議会」の産官学連携より生まれた、日本初果皮酢飲料「KAHISU®︎ Sweet & Bitter」(尾道造酢株式会社)が、世界最大級のデザインコンペティション「A’ DESIGN AWARD & COMPETITION(ITALIA)」にて「BRONZE A’ DESIGN AWARD」を受賞しました。


尾道造酢株式会社

尾道造酢株式会社 KAHISU|一般社団法人感性実装センター|感性 ものづくり

住所:広島県尾道市久保1丁目5-2

公式サイト:https://kakuhoshisu-onomiti.com/

オンラインストア:https://kakuhoshisu.com/

TEL:0848-37-4597

営業時間:平日9:00〜17:00(土日祝休み)

天正10年(1582年)創業。こだわりの製法で400年以上の歴史を紡ぐ食酢製造メーカー。創業以来受け継ぐ酢酸菌を用い、特許取得した特殊な発酵方法で、365日職人がひたむきにていねいに味を守り続けている。生果としては出荷できない地元の農産品を原材料にするなど、地域社会への貢献・フードロス問題などにも積極的に取組み、2022年1月にはSDGs宣言を行った。伝統を重んじ歴史ある道具や技術、先人の知恵を継承しつつ、KAHISUをはじめとする新しいお酢づくりにも挑戦している。


インタビュー

【販売責任者】

尾道造酢株式会社 取締役

田中丸善要

Q  KAHISU®︎ができあがった時の感想をお聞かせください。

KAHISU®︎は、尾道造酢だけでは絶対につくることができなかった商品だと思います。各分野のプロフェッショナルの皆さんと共に、様々な角度からこだわり抜いたものづくりをすることができました。納得の一品です。今回、感性工学を活用しながら感性価値という観点からはじめて商品開発を行いました。今まで想像もしていなかったアイデアやデザインの商品づくりで、当初は無理だと考えていたものも実現し、KAHISU®︎の商品化を通して実に貴重な体験をすることができました。尾道造酢としての商品開発の可能性が何十倍にも拡がったと感じています。

Q  どのように愛されるKAHISU®︎でありたいかお聞かせください。

1番のオススメの飲み方は、炭酸割りです。2つのフレーバーはどちらも自信作ですが、味の違いをじっくりとお楽しみいただきたいです。KAHISU®︎は美味しいのはもちろん、ポリフェノールや酢酸菌も多く含まれています。たくさんの人に、橙の皮からできたほろ苦さのあるお酢を知っていただきたい。美容や健康に気を使われている方々に毎日飲んでいただき、KAHISU®︎を生活の中に取り入れてもらえると嬉しいです。


【製造責任者】

尾道造酢株式会社 取締役工場長

丸尾仁人

Q  工場長として、KAHISU®︎ができあがった時の感想をお聞かせください。

商品化に至るまでには、納得がいくまで何度も何度もサンプルづくりをし、味覚調整を行いました。尾道造酢として自信をもった味に仕上げるため、原材料の計算をしてサンプルをつくりメンバーで試飲し感性評価を行う工程を繰り返しました。多くの方々から意見をいただいてつくり上げた商品。尾道造酢として、一つの商品にここまで時間をかけたのは初めてです。手にとっていただくお客様には、商品のデザインも楽しんでいただきたいです。私たち製造者とデザイナーの意見をすり合わせ、お互い納得のいくものづくりを追求するには数々の困難があり時間もかかりましたが、商品ができあがった時は胸が熱くなりました。

Q  どのように愛されるKAHISU®︎でありたいかお聞かせください。

今まできっと経験されたことがないフレーバーや、ビネガードリンク(飲む酢)とは思えないボトルデザインなど、あらゆる意味で今までにないお酢なので、お酢がお好きな方も苦手な方もぜひ一度お試しください。皆さんからどのような反応をいただけるか、今からとても楽しみです。


【プロデューサー】

【プロダクトダイレクター】

一般社団法人感性実装センター

センター長

柏尾浩一郎

Q  プロデューサー、プロダクトダイレクターの仕事についてお聞かせください。

プロデューサーの役割の一つは、プロジェクトの価値・方向性を明確化すること、つまり、コンセプトの策定です。この部分では、プロジェクトチームの各メンバーに共感と熱意を得られるアイデア(発想)を出せるかが重要であり、プロデューサーの力量に依存します。次にプロジェクトチームの編成です。こちらは、人財の情報から該当プロジェクトに相応しいメンバーを選出することがキーとなります。チームの編成後は、メンバー各々の個性を発揮してもらう環境を準備することですね。そして、メンバーどうしをつなげ、チームとして一体感をつくることがプロデューサーとしての大切な仕事です。以上の役割に加え、今回のプロジェクトでは感性研究の社会実装も行いました。一方、プロダクトダイレクターは、プロデューサーによるプロダクトのコンセプトを理解し、解釈・発展させ、プロダクト(製品)レベルでのダイレクション(ディレクション)を行います。今回のプロジェクトでは、プロデューサーがプロダクトダイレクターを兼ねていたわけですけどね(笑)。具体的には、KAHISU®︎の味覚やデザインのコンセプトを策定します。詳細については、感性評価およびデザインの各チームのメンバーがコメントしてくれると思いますが、グラフィックデザイナーの嵐川さんとは、ともに寝起きする感覚で一緒にインタラクションし、尾道造酢さんの思いを尊重させながら、KAHISU®︎デザインの最終形を探求していきました。

Q  KAHISU®︎プロジェクトの特徴についてお聞かせください。

これまでは廃棄されていた搾汁後の橙の皮が、本プロジェクトの素材です。橙の皮からつくった果皮酢を飲料として商品化することに、大きな可能性を感じました。食品工業技術センターの坂井研究員からいただいた「果皮酢」の3文字は、発音しやすく覚えやすくもあり、とてもフレンドリーな印象です。そして、この「果皮酢」という言葉そのものがプロジェクトのコンセプトですから、商品のネーミングをアルファベット6文字で「KAHISU®︎」としました。これは、国内のみならず、海外への輸出の可能性も視野に入れたものです。他のメンバーが答えられているので省略しますが、私たちKAHISU®︎プロジェクトチームは、近年拡大傾向が見られるビネガードリンク(飲む酢)の市場に、新しく Sweet & Bitter という大人の味覚をベースとする2つのオリジナルブレンドを登場させることができました。KAHISU®︎の美味しさを存分に楽しんでいただいたあとは、そのエシカルなコンセプトをギフトという形で、自分にとって大切な誰かに伝えていただくアクションのリレーを期待します。


【プランナー】

一般社団法人感性実装センター

上席研究員

小澤真紀子

Q  KAHISU®︎に価値を吹き込むためにどのようなアプローチをされたかお聞かせください。

尾道造酢さんの創業年は1582年で、本能寺の変が起きた年。丁寧なお酢づくりをひたむきに続けてこられています。酢蔵を見学させていただきその空間に身を置いた時、使い込まれた道具、染み付いた香りなどから直感的に自分の中に入ってきた要素も多く、人から人へ技術を繋げてこられた努力は大変なものだと感じ取りました。プランナーとして最も意識し時間をかけたことは、400年以上もの歴史と、今回の対象であるKAHISU®︎の新規性、この異なる要素を時空を超えてどのように結びつけ、訴求バランスをとり価値づけるかという点でした。今回マーケターも兼ねていましたが、市場に流通するビネガードリンクとは一線を画した商品に仕上げるという目標・コンセプトから、伝統的なマーケティングアプローチを大きく意識せず、この新規性のある商品をどのような感性をもつ消費者に伝えれば共感を得られるのかの視点を優位に取り組みました。世の中にない商品を提案することは、一企業にとってとても大きな挑戦です。私自身を含め皆さんもそうだと思いますが、市場に流通する商品との接点や自己の経験などを通して商品は評価されます。したがって、ギャップがあり過ぎると受容しにくく、既存価値からの動線も必要でした。KAHISU®︎を多くの方々にとって意味あるものにしたい。そのような熱量のなかアプローチを続けましたので、世の中に出る日を迎えられ感動もひとしおです。

Q  プランナーから見たプロジェクトの特徴と消費者へのメッセージをお聞かせください。

プランナーとしては、プロジェクトメンバーの知見をつなげながら、尾道造酢さんの商品開発のリソース面も考慮し量産化を実現する必要がありました。KAHISU®︎の商品化は、尾道造酢さんにとって今迄のものづくりとは異なる、あらゆる意味で新たな取り組みでした。よって、尾道造酢さんが今回の挑戦を機に、素晴らしい商品を持続的に市場に発信し続けていただくために必要なプロセスの探索も意識した点です。プロジェクト期間中は、様々なメーカーのビネガードリンクを飲み比べ、感性評価およびデプスインタビュー期間中はKAHISU®︎のサンプルを毎日飲み比べ、プロジェクトのスタート時より随分と健康になったと思います(笑)。私自身、食品の購入時は成分表をチェックしますが、成分も尾道造酢さんがこだわられた点です。KAHISU®︎は、その味覚特性からちょっと癖になる味もたまらない魅力です。美容や健康に良いという既存価値はもちろんですが、KAHISU®︎を通して、自身の身体や心に丁寧に向き合うゆったりとした時間を過ごしていただければ嬉しく思います。


【技術開発者】

広島県立総合技術研究所

食品工業技術センター 主任研究員

坂井智加子

Q  技術開発が実りエシカルな商品ができあがりましたが、消費者へのメッセージをお聞かせください。

人や社会、地域、環境、地球のためにという相手を思いやることは、生活の根源と思います。通常は利用されなかったもったいない資源を活用した商品、思いやりのある商品を相手のためにどうぞ届けてください。

Q  技術開発で苦労された点、また商品化された時の思い・喜びをお聞かせください。

まず、技術開発した果皮酢を実用化する製造技術に尾道造酢さんが取り組んでいただけたことは大変嬉しかったです。どの発明も実用化されるとは限りません。本技術は活用されずに終わるかもしれないと思っていましたので、取り組んでいただき、なおかつ素晴らしい商品をつくろうと思っていただけたことが驚きであり、ぜひとも協力したいと思いました。果皮酢製造技術は、酵素分解と酢酸発酵から成っています。果皮酢製造技術で苦労した点は、果皮由来の嫌な香りやえぐ味を出さないようにする酵素剤の選択です。尾道造酢さんが長い歴史の中で大切にされていた酢酸菌のおかげで、私が携わった技術工程としてより良いものができたと思います。感性評価やデザインなど、商品化に取り組まれている期間、尾道造酢さんからお話を伺っていましたが、果皮酢の苦味を活かしながらバランスのとれた商品ができ、またそこに至るまで尽力されてきた数々のお話を伺い、尾道造酢の皆さま、感性実装センターの皆さま、関わっていただいた全ての皆さまに感謝いたします。


【感性工学研究者】

近畿大学 次世代基盤技術研究所

米原牧子

Q  今回のプロジェクトで、感性工学をどのように活用されたのかお聞かせください。

主に味の評価に感性工学を取り入れた目的は、作り手の飲んでもらいたい味と、消費者が求めている味、または美味しいと思う味に乖離がないかについて確認し、エビデンスとして活用できるデータを取得することでした。感性評価指標として、味覚要素である「甘味」「酸味」「苦味」だけではなく、飲みやすさやヘルシーさ、さわやかさなどの感性指標も加えて評価を行った結果、果皮酢として飲みやすいと感じる味覚には何が影響しているのかが分かりました。この結果は、その後の味覚調整や、尾道造酢さんとして「この味で行こう」と意思決定する上で非常に参考になったデータとなったと思います。

Q  感性工学の活用による、企業側のメリットや可能性についてお聞かせください。

今回の事例からも、感性工学を活用することでの企業メリットは十分にあると考えています。例えば、作り手の思いが消費者にきちんと伝わっているか、または消費者の思いを作り手が理解できているのか、このような両者の差を埋めるために感性工学や人間工学の手法が活用できます。感覚的な説明では伝わりきらない内容が定量的に説明できるメリットはもちろん、思ってもみなかった展開につながる可能性もあると思います。


【デザイナー】

Storm Graphics 代表 

グラフィックデザイナー

嵐川真次

Q  ボトルデザインでデザインコンセプトをどのように表現されたかお聞かせください。

デザインコンセプトは「Artistic Design for Ethical Choice   地球のために、100年後の子供たちのために」。KAHISU®︎には、アートに通じる奥深さがあります。それは、「酸味」「甘味」「ほろ苦さ」による深い味わいです。この味覚と共通するアート性を、絵画調の色彩および矩形を配し表現しました。ギフトとして贈り贈られるときに感じる質感と豊かさを体験していただきたいです。ボトルも一般的なビネガードリンクでは採用されていない形状であるシャンパンタイプとしています。また、エシカルの観点から、ギフトボックスは1つのパーツで構成しており、過度な装飾を行わず、素材の色を生かしたシンプルなデザインとしています。

Q  デザインしていく上で苦労した点についてお聞かせください。

「Artistic Design」という感覚感性価値と「Ethical Choice」の啓発感性価値という、ある意味相反している部分をどうまとめるかに苦労しました。デザイン表現においては、啓発性を考えると説明的になりがちですが、KAHISU®︎のデザインでは、これまでなかった価値や、大人の質感をもたせるようミニマムに表現する必要がありました。これらを同時に表現することが難しいところで、プロデューサー兼ダイレクターの柏尾さんと試行錯誤を幾度となく繰り返しました。ボトル造形、キャップの形状及び材質、ガラス面への直接印刷の方法や、環境に配慮した紙の選定など、各メーカーとも確認を行いながら、デザイン表現実現のため、あらゆる可能性を検討しつつ、校正と打合せを20回以上重ねた結果、デザインの最終形にたどり着きました。これにより「Artistic Design for Ethical Choice」の表現に限りなく近づくことができたと思います。


プロジェクトチーム

|プロデューサー

|プロダクトダイレクター

柏尾浩一郎


|プランナー

小澤真紀子


|技術開発者

坂井智加子


|感性工学研究者

米原牧子

近畿大学 次世代基盤技術研究所


|デザイナー

嵐川真次

Storm Graphics 代表/グラフィックデザイナー


|販売責任者

田中丸善要


|製造責任者

丸尾仁人

尾道造酢株式会社 取締役工場長


|事務局


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